コラム

宇宙でも活躍する、ニコンのカメラとその歴史

1971年、アポロ15号にニコンのフォトミックFTNが搭載されました。

宇宙空間では、ラバーやプラスチックが使えず、NASA指定の素材に置き換えて作られたそうです。

はんだ付けもできる限り削減され、内部回路にはコーティング、ボディもレンズも反射を防ぐためにツヤ消し加工がされました。

高度な光学機器を国産化したい…レンズからのスタート

近代技術の国産化は1900年代初頭、どの分野でも急務といわれていました。

それは光学機器でも同じでした。

遡ること100年ほど前の1917年、現在のニコン株式会社である日本工学工業株式会社が設立されました。

4年後、光学技術の先進国ドイツから8名の技術者を招聘し、模倣から始まりできあがった最初のレンズの名前はニッコール…ではなく、アニター(anytar)でした。

ドイツ人技術者が帰国してからも、日本人の技術者によって改良が重ねられます。

1931年くらいには本場ドイツのレンズと見劣りしないレベルに達したと言われています。

現在の国立天文博物館に望遠鏡が納品されたのもこの時期です。

1932年、日本工学工業株式会社の光学レンズの名称をニッコール(NIKKOR)、1946年に、小型カメラの名称をニコンに決定し、商標登録されました。

ニコンはもともとニコレットという仮称だったそうです。

1948年、ニコンの名が初めて付いた小型カメラのニコンⅠ型が登場します。

1957年にはライカM3を目標に開発されたレンジファインダー式カメラ、ニコンS」が誕生しました。

2年後の1959年には、ニコンSPにミラーボックスとファインダーが追加された、ニコンFが誕生します。

ニコンFは、その後15年にわたり、80万台以上が生産されました。

ニコンF開発当初、

「電気系統はトラブルの元」

という考えがあったようですが、1971年にニコンF2で電池室だけをボディに収めることが許されました。

電子式シャッターが初めて採用されたのは、ニコンF3でした。

ニコンF3は、電子シャッターだけでなく絞り優先自動露出機構も採用されるなど、最新の電子技術が凝縮されたモデルでした。

フラッグシップ機の開発は、2004年のニコンF6まで続きます。

ベストセラー「ニコンF」をより身近に。ニコレックスとニコマート

ニコンFなどのフラッグシップ機の開発と同様に、アマチュア向けの機種も進められていきます。

1962年、Fマウントレンズに対応したニコレックスFが誕生します。

それ以前にもニコレックスはありましたが、廉価版の開発というのはまた違った苦悩があり、ニコレックスシリーズはこのニコレックスFをもって終了します。

次に登場するのが1965年のニコマートFTから始まるニコマートシリーズ。

シャッターなどの一部の部品を他社製のものを使用していたニコレックスとは違い、ほぼ自社開発として発売されます。

ニコマートFTから1977年発売のニコマートFT3までが機械式シャッター。

電子式は1972年のニコマートELと1976年のニコマートELWの2機種です。

先進技術や新機能をまずニコマートなどの中型機に搭載して、その技術が確立されるとフラッグシップ機に採用するというように、ニコンのカメラは進化を遂げていきます。

一眼レフの小型化の流れも、中型機のニコンFMが始まりです、

ニコマートの冠が外れた後は、ニコンFMシリーズが機械式シャッター、

FEシリーズが電子式シャッターを採用したものと分かれますが、2001年登場のハイブリッド式、ニコンFM3Aで2つのシリーズが統合されます。

オートフォーカス一眼レフの登場

ニコンで最初に開発された、オートフォーカス一眼レフの市販モデルは、1983年登場のニコンF3AFです。

他のメーカーが中型機でオートフォーカスを搭載したのに対し、ニコンはフラッグシップ機に搭載したことで話題になりました。

その後、1985年に本格的なオートフォーカス一眼レフのニコンF-501が登場します。

ニコンのオートフォーカス機能が搭載されたものは、F3桁とF2桁のシリーズがあります。

先行の3桁シリーズはフィルムの感度自動設定や巻き上げ用モーターが内蔵されました。

2桁シリーズはオートフォーカスセンサーのワイドエリア化や3D測光の採用など、さらに進化したモデルです。

2001年に登場したニコンUは、アニエス.ベーとのコラボモデル「b.Nikon(ベー.ニコン)」も台数限定で販売されます。

オリジナルロゴが入ったボディやストラップで、女性客の獲得も狙っていきました。

国際的な実績と評価が生んだニコンへの信頼

2006年、デジタルカメラ事業へ集中するために、フィルムカメラ事業は縮小されてしまいますが、現在でもニコンF3をはじめ、ニコンのカメラは根強い人気があります。

1950年。カメラマンの三木淳が、ライフ誌のデビッド・ダグラス・ダンカンを撮った1枚の写真。

これを見たダンカンがそのシャープさに魅了され、朝鮮戦争にニッコールのレンズを持っていったことが、世界にニコンの名が知れ渡るキッカケとなりました。

国際的な信頼と評価が、ニコンの今の地位を築いていったのかもしれません。

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